『顔と体のための個人電気分解』を分解してみた2。

家庭用電気針脱毛器を分解したら、予想していたよりおもしろい回路になっていた。

前回記事:
『顔と体のための個人電気分解』を分解してみた。

Clean+Easy Home Electrolysis Kit Machine Hair Removerの回路をトレース。一部は意図的に削除。

シンプルに見えるけど動作を追うと結構よくできている。汎用ロジックIC 1個でこんなにいろいろ実現しているのはすごい。毛抜きの内部でこんなに感動できるなんて思ってもみなかった。

・基本的な動作として、待機状態では針から皮膚に流れる電流は微量で痛み無しに針を毛穴に挿入できる。挿入した針が毛根に到達して電気抵抗が下がり針に流れる電流が60μAを超えると動作状態に入り電気分解に必要な0.4~0.8mA程度の電流が針から約8秒間供給される。その後待機状態に戻る。

・全体の電源は006P電池に逆接続防止のD1を経由したうえで供給している。(BATT 9[V] – VD1 0.6[V] で Vdd=8.4[V])
・微弱電流により抵抗の変化を監視する待機状態と、電気分解を行う電流を流す動作状態がある。
・待機状態から動作状態の遷移はR1とスタイラスが当たっている抵抗値の比率でヒステリシス付きNANDゲート1/4の入力がH→Lのスレッショルドを下回った時に発生する。
・動作状態から待機状態への遷移は、C2とR4で構成される時定数回路で決定される。約8秒。
・スタイラスのプレートP1が+で針はGNDにつながっている。P1は100kΩを経由しており、待機状態では動作状態に遷移する直前で60μA程度しか流れない。(NANDのH→Lのスレッショルド電圧VH→LがVddの33%だと仮定して Vdd / (100k+50k)[Ω] = 56[μA]) この程度だと皮膚は刺激を感じない。
・本体のプレートはスタイラスのプレートと完全に同電位ではなく、R8を経由しており動作状態でのショートによる針先の破損を保護する。スタイラスのプレートと針は構造的にショートしないのでR8の制限が必要ない。
・スタイラスの先端と本体のプレートを直接接触させることで動作状態に遷移してブザーが鳴るためこれを動作確認として利用できる。
・スタイラスを毛根に挿入してR1の電圧降下が発生するとR2の電圧も下がり、NAND 1/4の閾値を下回ると出力がHになり時定数回路を構成するC2の充電を開始、C2の充電が行われる時間がNAND 2/4のワンショット動作の時間となる。
・NAND 2/4のワンショット動作が始まると、NAND 4/4の出力がHになり、この電圧が操作者が設定したVRを経由してスタイラスのプレートP1に電気分解可能な電流が供給される(動作状態)。このとき最大電流はImax[A] = (Vdd – VD3)[V] / (VR+人体抵抗)[Ω] となり、VRはダイヤルの位置により10.4kΩ~1.5kΩ程度の範囲で可変される。仮に人体の抵抗を8kΩ程度としたら、VRの位置により電流はおよそ0.4mA~0.8mAの範囲となる。
・最大電流はNANDゲートの出力電流の制約によりVRのショートモードでも10mA程度に制限される。(そこまでは想定していない?)
・ダイヤルは半固定抵抗に直結されているだけなので0の位置でも動作状態に電流は流れる。
・C4の充電が完了するとNAND 2/4の出力が再びHになり、NAND 4/4がオフになってスタイラスへの動作状態の電流が遮断される。C1とR6による遅延回路でNAND 2/4と4/4の連動はわずかに遅れるためNAND 2/4のワンショット動作終了時はNAND 1/4を確実に待機状態へ遷移できる。
・待機状態に遷移後も電気抵抗が低い状態であれば再び動作状態を開始する。
・C2充電中はNAND 3/4で構成される発振回路で圧電ブザーを駆動する。
・待機状態でもわずかに電源を消費するため未使用状態でもダイヤルの位置に関係なく電池は無くなっていく。

昨日紹介したリンク先の情報から、抵抗検出つきの電気分解法回路は特許取得されており、回路は異なるが公開されている。この特許について現在は期限切れ。今回購入したPersonal Electrolysisにパテントの記載は無い。現物の回路は特許文書とはだいぶ異なっていて、この特許文書の回路は挿入時適正な電流値になったときから一定時間ブザーを鳴らす機能だけとなっている。また電流の検出方法も違う。

Electrolysis hair removal apparatus – Google Patents
https://patents.google.com/patent/US4216775A/en


毛抜き無しバージョンの回路も推定してみた。

分解の写真や前回紹介したリンクから推定する限り、これだけだと思う。特許回路は実装されていない。回路としては自作バージョンと同じ。ボリュームは10kΩらしい。毛抜き有りバージョンと比較して手抜き感が半端ないコストダウンの跡がうかがえる。工夫があるとしたら、ケースの物理的な構造によりボリュームの動く範囲が制限されて、操作を間違えても極端な電流がかからないようになっているくらいなのと、使っていないときは全く電源を消耗させないことくらいか。毛根に挿入するまで正極側を触らないようにしないと、毛根に達する前に電気分解に必要な電流が供給されてしまって痛いし操作が面倒。今は毛抜き無しバージョンが売られてないから間違わないけど、もし選ぶなら毛抜きの差だけではないから毛抜き有りバージョンにしよう。

※毛抜き有りバージョン、毛抜き無しバージョンについて。
販売元のAmerican International Industries社はブランド名としてclean+easyで毛抜き有り版だけが出ているが、以前はOne Touchブランドでエレクトロリシス製品を出していて、毛抜き有りがDelux版、毛抜き無しが無印版で出ていた。One TouchブランドのDelux版はclean+easyの現行品と全く同じ構成。毛抜きの有り無しの違いだけかと思ったら回路が全く違ってることが判明した。

ちなみに付属の毛抜きは極めて使いにくい。外国のレビュー動画でも「毛抜きはたくさんあるからもう要らないヮ」みたいなことを言っていた。

『顔と体のための個人電気分解』を分解してみた2。」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 『顔と体のための個人電気分解』を分解してみた。 – の回想録

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