チェリー CK-666を作った。

またラジオキットを作った。 子供の科学でおなじみの科学教材社の広告でよく見た、おそらく自分が生まれる前からあるCHERRY CK-666。使用部品は時代に応じたものに変わっているものの、基本的な構造は当時と変わってない。科学教材社ではもう扱ってないっぽい。6石スーパーラジオ。ボード式で、未加工のただの箱なケースに完成品を収納できる。

シンプルな袋詰め。品名シールに特徴が書かれている。「…組み立て技術を身につける為に最適な電子教材です。」うーん。職工育成用、なのか? 丁寧にエアパッキンで包まれた部品類は袋詰めになっていてパーツ型番は取説と別紙になっている。チェリーキットはだいたいどれもこんな感じで、部品が変更されても取説や回路に変更を加える必要が無いようにできている。部品袋は「6TR CR部品」となっていて、別製品KM-606と共用になっているのかも。回路構成はごくごく普通の教材的スーパーラジオ、普通すぎて言うことも無い。自励発振の局発と混合が1石、中間周波増幅で2石、ゲルマダイオード検波、低周波2段で電力増幅は入出力ともトランス結合のプッシュプル。6石スーパーとしては普通の構成で安心。現在よく出回っている中国製ラジオキット、アマゾンだと商品画像に回路図も出てて、買わずに見てるとどれも「普通じゃない」ところがあって、それは何でだろうと問いたい。検波ダイオードがSiでバイアスがかかってるくらいは良いとして、トラ検になってるとか、それを1石と数えて良いのか、そのためにIF段数が減って一段増幅になってるとか。

さっさと組立。21時半くらいから開始して23時半過ぎてた。半分以上の時間はこのキットの特徴でもある錫メッキ線での配線に費やされる。

基板の銅箔パターン配線は一部のみとなっていて、部品を挿すところはプリント配線無しのランドのみ。それを取説の図を頼りに配線するという手順。回路は読めなくても配線の位置さえ間違えなければ組立自体は問題ない。ソルダリング職工育成はとにかく、ユニバーサル基板を使った工作ではこの手の作業が必須なのでキットから自作に移る過程では良い経験だと思う。

ネットで予習をしていたら、めんどくさいとか、音が悪いとか、発振するとか、いろいろ書かれている。チェリーのラジオはどれもゲイン過多、音量過多な気がする。調整が上手にできれば最高の感度を引き出せるものの、うるさい音量を下げたり発振を止めるのにキットを作る以上のテクニックや測定器が必要になる。このCK-666も例に漏れずゲイン過多め。ネットを探すと改善方法とかいろいろ出てるけど、ここではオリジナルを尊重して組みっぱなしで未調整だとどういう感じなのかを確認。

・動作開始時の電池電圧 9.2V (006P使用期限2019年7月←すでに過ぎてる)
・動作開始時の消費電流 13.5mA (Vol最小、放送には非同調)
・IFTの中心周波数 457kHz、-3dB周波数428kHz (上側は発振して不明、490kHzでは-3dB未満)
・局発の可変範囲 971~1726kHz (受信周波数 514~1269kHz IF=457kHz)

IFは正確に455kHzではないが+2kHz程度なのでだいたい合っている。取説ではIFTは一回転以内でと書かれていることからIFTの調整がおおよそ済んでいることを前提にしているのかもしれない。またIFフィルタの帯域はこれでは広すぎておかしいし、感度もかなり落ちているはずだけど、セットとしてのゲインがあるので放送は普通に聞こえる。下側だけでも29kHzなので上側もあわせると50kHz以上の帯域幅がある。単に調整がばらついているだけなのか、意図的に広くして未調整状態でも放送の受信を確認できるようにあるのかは不明。 局発は上限がだいぶ低いからこのままでは中波放送の帯域がカバーできない。放送波を使った調整でもなんとかなるので、このキットの調整の中心はここにある。

ただ取説の調整方法は簡易なもので、放送波を使ってトラッキングの調整をOSCコア、OSCトリマ、アンテナトリマで行うようになっててアンテナコイルの位置調整(アンテナコイルのインダクタンス変更)で低い周波数側のトラッキングをとる手順を説明していない。今回作ったセットではコイルのコアを少し抜き気味にしたあたりが最大感度になった。トラッキングを完全にして、IFTの調整も完璧におこなうとやっぱり発振した。チューニングもピーキーでバリコン軸直結の小さなダイヤルでは微調整が非常に難しい。音質も こもり気味。IFTの調整は取説通りに完全に455kHzピークにせず、2段目3段目のIFTは互いにピークを上側、下側にずらして双峰特性を持たせるようにする。今回は2段目を453kHz、3段目を457kHzにピークを持ってきた。IFTの調整を取説どおりきっちりにすると一番狭帯域のIFT白に依存して5kHzくらいの帯域幅になってくる。感度と選択度は最高になるが、IFのスペクトルが集中して発振しやすくなるし、チューニングもしにくくなるし音質も悪くなるしで良いことが無い。AM放送は周波数ステップが9kHzなので9~10kHzの帯域幅を持たせると音質が向上する。逆に帯域幅を10kHz以上にすると隣接ビートが増えたり混信することになる。

夜間に聴いた。この辺ではゲルマラジオでも余裕で入るCBC 1053kHzの1ステップ下にある中国国際放送CRI 1044kHzがほぼ完全に聞こえる。ここまで分離が良くなるとは思わなかった。昼間でも良く入るNHK大阪666kHzの1ステップ下の平壌放送657kHzも完全に分離できる。前にDSPラジオのICF-M870Nで確認できた海外局は上手にチューニングすれば内蔵アンテナのみで室内でもほとんど受信できる。簡単な教科書的回路でも6石スーパーならここまで十分な性能が得られるのは感心する。

測定器を総動員して調整したCHERRY CK-666は完成。 音よし、感度よし、見た目よしの実用的なラジオになった。8石のKM-88はそのじゃじゃ馬な性能を持て余してしまったから、ディスクリートのラジオキットは6石くらいがちょうどいいのかもしれない。 このCK-606は部品レイアウトに無理が無くて調整がしやすいから感度・選択度が自由に設定できて、他のケース付き6石キットはいうにおよばず、市販のICラジオにも負けない性能を引き出すことができる。ラジオキットではトップクラスの出来だと思う。作りにくさも含めて。

東海地方なのでラジオを作ったときはNHK第一729kHz、NKH第二909kHz、CBC 1053kHz、東海1332kHzが入ることを最低限の条件としている。この4局はストレート方式でも、アンテナが良ければゲルマやトラ検でも入る。スーパー式のCK-666は余裕で入るのだが、NKH第二909kHzはスーパー式だといつもビートが聞こえる。これは中間周波数455kHzの2倍高調波910kHzが放送波909kHzとビートを起こすことによるものらしい。CK-666でも909kHzを受信するとビートが結構聞こえる。これは中間周波数を正しく調整できた証でもある。市販のソニーやパナソニックのアナログ方式ラジオでも小さくビートが聞こえる。こういうことが起こるのはそもそもこの周波数で放送してるNHKが悪い。1978年にAM放送を10kHzステップから9kHzステップに変えるときにこの周波数を選択する時点でIF=455kHzがJIS標準なのだからビート障害が出ることは分かってたはずで、なんとかしなかったNHKか郵政省(当時の電監)が悪い。

— 後日談 —

選局されてないところで他のスーパーラジオではあまり聞かないプチプチノイズが入っていたので何でか確認したらIFT黄、IFT白のシールドがアースされていないため混入か放射されるノイズだった。取説には載ってない配線を追加してアースしたらノイズが少し減った。RF-IFやIF-検波段の結合も少しあるようで、RF段とIF段の間にシールドを設置したり、検波ダイオードあたりをシールドで覆うとバックのノイズが減少する。手を加えなくともシンプルな回路を通して小口径のスピーカから出る、少しざらついた音はいかにもキットのトランジスタラジオっぽくノスタルジックで趣がある。

あと、最後まで売れ残ってたアマゾンでも在庫無しになった。

チェリー CK-666を作った。」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 6石スーパーラジオのキットを組んだ。 – の回想録

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