オシロスコープで商用電源を直接測ってみる

オシロスコープで商用電源を直接測ってみたい。でもフローティングプローブができるような高級なオシロも高圧差動プローブも持ってないので普通の受動プローブを使って測定してみることに。

普段弱電しか測定しない機器を商用に直接接続するのは結構怖いと思います。で、いつものようにヤフー知恵袋とかで聞くと電圧が高いから壊れるだの、できないから絶縁トランス使えだの適当なこと書かれて脅されます。本当ですか~???

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10119443955
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1142176236
http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa194339.html

※正しい事を書いてくれているところもそれなりにありますが、質問しているような人には判断できないと思う。中途半端な知識でオシロの電源か入力を絶縁トランスで浮かせればオッケーとか思ってるんじゃないかな。入力側に絶縁トランスを使ったってフローティング状態なら大地間で電圧が発生するのでオーディオマニア御用達の1:1トランスとかだと大地間の電位差で普通に感電しますよ。絶縁トランスで二次側を浮かせて使っているときに二次側で感電しても一次側の漏電ブレーカは落ちてくれないので、漏電ブレーカを落とさないという目的は達成できるでしょうが、はっきりいって危険。運悪く死ぬかもね。そんな危険なこと「一般的には」などとドヤ顔決めてコメントするものじゃないよ。

インターネッツの嘘臭い情報は無視するとして、どうやるのかというと非常に簡単で、プローブをコンセントの一方に当てるだけ。ただしプローブのグランドは理由なくどこにも繋がないこと

IMG_0969

雑っっ!!

撮影がいまいちですが、ほぼ60Hzの若干歪んでるがまあまあきれいな正弦波が見えました。電圧も289Vp-p、つまり交流電圧で102Vと理屈通り。(最大値=実効値×√2、ピークトゥピーク電圧=最大値×2)

IMG_0967.JPG

実際のところオシロスコープの入力端子を見ると、この機器の場合CH1、CH2はMAX 400Vpと書いてあるしプローブも10:1なので「交流100Vの入力なんてぜんぜん余裕」なわけですよ。針式テスタなんかレンジを間違えれば即破損か運が良くてもヒューズ切れだけど、オシロでは最大定格未満ならレンジがどうであれ、まず壊れたりしません。以前作った市販キットの真空管プリアンプの出力だって80Vくらいあって、当然分圧などせずにそのまま調整してましたし、正しく使ってればわずかAC100V程度の入力で今時のオシロが壊れるわけないです。

※耐圧について訂正
取説によると最大入力電圧は1kHz以下で800Vp-p。実効値ならAC283Vまで直接突っ込んでもいい。標準装備は10:1プローブだからAC2800Vまでいけるが、実際にはプローブの耐圧のが低くて600Vp(1kHz以下) なので単純な交流なら425Vが上限。商用電源は言うに及ばず、真空管アンプのB電源くらいなら直接プローブしてもいいくらい。AC100Vなど怖れるに足らない。

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うちはずるいキュレーションメディアではないので、他所のサイトに任せず自分で図を描いてみた。オシロってのはだいたいこんな感じの構成になっているはず。デジタルオシロならCRTのとこがA/Dとメモリになります。FG(フレームグラウンド)や3ピン電源コンセントのアースをきちんととってれば、どうやってもFGに電圧がかかることは無いし、何かあってもACラインの漏電ブレーカが断になる。

osc1

でも電源コンセントのアースとか、FGの大地アースとかちゃんと取らずに使ってると、こうなる。

osc2

上の図でGND側をコンセントにつなぐとどうなるか、試した。理解してないと危険!
https://mzex.wordpress.com/2018/02/17/12390/

今日は追試してみました。今度はCH1、CH2の両方を使ってフローティングプローブに挑戦です。次の写真では右側がCH1、左側がCH2。アースリードは両方を接続して空中に居ます。

IMG_0985

次の通り。前回の測定結果と違いますね。実はこれ非常に危険な状態です。オシロ本体の大地アースを取らずに測定しています。CH1、CH2が逆相になっており137Vp-p、線間では274Vp-pとなり、結果としてCH1、CH2を合成すると97.1Vの交流となります。写真では非表示になっていますが、CH1+(INV CH2)のADD表示をオンにすると274Vp-pの差動電圧を観測できます。このとき、オシロのきょう体と大地間の電圧をデジタルテスタで測るとAC52Vを指しました。死ぬ覚悟でGND端子を触るとピリピリします。

IMG_0983

次はGND端子を大地アースに接続したところ。CH2が0Vになり、CH1が289Vp-pで振れています。オシロのきょう体は接地されているので当然0V。GND端子を触っても何も感じません。これはCH2側のコンセントの端子がコールド側(アース側)になっているためで、このときCH2側にグランド線を接続しても理屈の上では何も問題は無いことになります。なお、2つの状態でどうして電圧が違うのかは検討に値すると思います。

IMG_0984

(疑似)フローティング測定ではオシロとACラインの関係はこんな感じ。演算部( CRT手前の(+)のところ)の速度が遅い機種だとRFでは使えない場合もあります。

osc3

さすがザ・インターネッツだけあってもっといい説明をテクトロニクス様がおこなってくれてます。マイナビニュースにも同じ内容のものが掲載されています。これを理解できるまでは、この測定は試さないほうが身のためだと思います。

オーディオマニヤ様やオシロ買ったでさっそく自慢する的なブログなんかで電源の波形を見て「商用電源はすごく歪んでてきれいな正弦波じゃない!やっぱりノイズまみれなんだ!!」なんて言って写真あげてるの見ると、オシロのFGもとらずに抵抗入れて分圧しようとしてインピーダンスが上がってたり、絶縁トランス入れてみたり工夫はしてるんだけど、測定方法に問題があって外来ノイズが混入してたり余計なものが混ざって歪んでるっぽいのがちらほら見られます。 当然うちの測定点付近にもパソコン、インバータエアコン、数々スイッチング電源がつながっている状態で、60Hzに非同期で発生しているノイズはあると思いますが、そこまでひどい波形ではないですよね。インテン最大で確認しましたがヒゲとかも出てなかったです。

プロービングで失敗しないためのオシロスコープ応用講座 → http://jp.tek.com/document/1125977

マイナビニュースだとこのへん。注意しないと命にかかわるぞ!! – 高電圧プローブ → http://news.mynavi.jp/series/oscilloscope2/006/

ポイントとしては、オシロのGND(きょう体)は大地アースされるべきもの、複数ある測定端子のGND側はすべてきょう体に接続されている、測定端子の入力(センター)は浮いている状態で、測定端子ときょう体(=GND)間の抵抗は数MΩ~数十MΩで耐圧は周波数が低ければ数百ボルトまでOK。きょう体の電位=測定端子のGNDを浮かせて使うのは、測定結果が不安定になるし、被測定回路に有害な電圧がかかったり、測定者にも危険が及ぶ場合があって、やってしまいがちだけど、とにかく危ないので止めましょう、ということです。これが分かっていればAC商用ラインの測定だって何の問題もありません。

こんなことは、オシロ付属の取説 (CS5400のが無くなったのでGOS6103Cに変更。接地の注意はあるが、フローティング測定の記述が無い。P18を見ると垂直軸ADDとCH2 INVの機能はある。ただGOS6103Cの取説P8に「電源付近と建造物、配電盤やコンセントなど建屋施設の測定は避けてください。」て書いてあるから、規定の上でこの機種はAC機器の1次側回路は測っても良いが、コンセントに当ててははいけないことになっている。)の一番最初にすら書いてあることで、本当は知っててアタリマエ。本章に入る前の、ご注意レベルなわけです。ちなみにこのオシロ本体に貼ってある注意書きシールにもGNDと接地のことが書いてありますよ。当然「接地厳禁、絶縁台!」「本体に触れるな!!」「アイソレート!!!」なんて書いて無い。

cs5400warn

似たような理由で動いている回路にハンダごて当てるのも止めましょうね。昔々のESD対策してないハンダごてと真空管で工作してるんだったらともかく、今時の静電気やリーク電流で即死もしくは劣化するようなディバイスを今時の絶縁されてないハンダごてで稼働中にいじくりまわしたらどうなるかくらいは理解してたほうが余計な苦労をしなくていいと思います。

汚い電源波形の見本は別のエントリに分離。

商用電源を汚くして見る。
https://mzex.wordpress.com/2018/01/20/12278/

こんな測定方法は厳密では無い、という人もいるようなので危険な実験を追加。(波形を見るということが目的なのに、この方法では電圧が正しくないということに疑問を呈されている様子。)

商用電源測定時のプローブGNDが外れていてもよい理由https://mzex.wordpress.com/2018/02/17/12390/

測定器の基準レベル(GND)を他の機器と違う電位にして測定するのは禁じ手ではあるが、時には有効でもある。失敗しても死ぬことが無い程度の誘惑に駆られた時は。

オシロでテレビを見たい – ゼロの境地へ。
https://mzex.wordpress.com/2018/01/17/osctv2/

オシロスコープで商用電源を直接測ってみる」への5件のフィードバック

  1. 2本だと、確かに基準電位を変えられるというメリットがありますね。
    疑問が解消した所で、実際に試してみました。
    1本での測定、2本使っての測定の両方で測定しましたが、問題なく安全に測定できることが分かりました。少々びびりますが、実際に試すとオシロ筐体は接地した状態で測定できるので危険はありませんでした。
    有用な記事ありがとうございました。

  2. 長所短所は用途次第です。2本だとオシロのGND以外を基準電位にできるのが利点ですが、CHを食われるので他信号との関係が測定しにくくなりますし、電気的にも物理的にも金銭的にもいろいろと扱いにくいです。そもそもオシロはオフセットを自由に調整できるので1-2CH差動のフローティング測定がどうしても必要な状況はそれほど無くて、先にプローブ1本で正しいプロービングができないか考えたほうが良いとは思います。

  3. 回答ありがとうございました。
    よく分かりました。
    因みに、プローブ1本で足底する方法と2本を使って測定する方法を示されていますが、それぞれの長所や短所など違いはありますか?

  4. ひのきさんこんにちは。

    >オシロ電源の3Pを接続またはフレームアースを確実にとっておき、プローブの方側(+)だけ接続
    その通りです。3Pのアース端子もフレームもプロープGNDもつながっているので、どこを接地しても回路の上では同じです。ただ接地接続にも抵抗があり電圧降下もあるので、精確な測定のために本当に基準電位にしたいところにプローブのGNDを接続するのは正しいことです。

    >プローブの片側のみ接続する方法は、コンセントのホット、コールド側のどちらに当てても問題ないでしょうか?
    >ホット、コールドの識別はどのような波形になるのでしょうか?コールド側がマイナス波形から始まり、ホット側はプラス波形から始まるのでしょうか?
    この状態でプロープの端子だけをAC100Vコンセントに当てるとホット側は141Vpの正弦波、コールド側は0Vで電圧無しが観測されます。いきなりプローブしても問題ありません。本記事の最後の両CH表示の写真がそれで、上の正弦波が1CHのホット、下のほぼ直線が2CHのコールドになっています。ここでコールドと分かった側は対地電圧0VなのでプローブのGNDが接続できます。

    >2CHを使って測定する方法も…CH1とCH2に接続して、引き算して表示する、というやり方で宜しいでしょうか?
    その通りです。この場合はCH1-CH2間の電位差を求めるので接地は必ずしも必要ではないのですが、筐体の電位が上がって感電したり被測定回路に影響を与えかねないので、よほどの理由がない限り接地したほうが無難です。

    >デジタルオシロで実験しようと思いますが、問題ないでしょうか?
    USBオシロとかオモチャレベルの「波形表示装置」は分かりませんが、まともな製品ならデジタルもアナログも同じです。耐圧の単位が分からないのですが、本体の耐圧が300Vp-pならAC100Vは282Vp-pなので1:1ではギリです。(電圧変動で耐圧を超えるかも…) 10:1プローブ使用なら問題ないです。耐圧が300Vpなら被測定電圧は141Vpなので1:1でも問題ないです。

    火災や感電死しないように注意して試してみてください。

  5. 有用な記事ありがとうございます。
    改めて確認したいのですが、AC100V測定は、オシロ電源の3Pを接続またはフレームアースを確実にとっておき、プローブの方側(+)だけ接続しGNDクリップは接続せず空中に浮かせておけば測定できる、と言う事で宜しいでしょうか?
    正しい測定の図が、プローブのGND側をコールド側に接続した状態で紹介されていたので、疑問に思いました。この図は、別記事のプローブでホット、コールド判定した後に接続した場合の図ということなのでしょうか。
    プローブの片側のみ接続する方法は、コンセントのホット、コールド側のどちらに当てても問題ないでしょうか?別記事で、GNDも接続したものがありましたが、検電器などでホット、コールドの判定は出来ると思いますが、プローブの片側を当てることでホット、コールドの識別はどのような波形になるのでしょうか?コールド側がマイナス波形から始まり、ホット側はプラス波形から始まるのでしょうか?
    また、2CHを使って測定する方法もご紹介していましたが、この方法は3Pプラグなどを使用して筐体をアースに落とした状態で、2CHのそれぞれのプローブの片方を例えばCH1をホット側(コールド側)、CH2をコールド側(ホット側)に接続し、プローブのクリップはCH1とCH2に接続して、引き算して表示する、というやり方で宜しいでしょうか?
    デジタルオシロで実験しようと思いますが、問題ないでしょうか?(最大電圧300V←1:1の時?)

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